2005年6月8日

 小笠原伯爵邸                                                 

 東京都選定歴史的建造物に指定されているこの館は、旧小倉藩藩主の伯爵 小笠原長幹 の邸宅として、1927年(昭和2年)に、江戸時代の小倉藩下屋敷跡地であった、現在地に建てられました。この建物にとって不幸だったのは、戦後米軍に接収され、1952年に東京都に返還されてから福祉局中央児童相談所として1975年まで使用されていましたが、その後25年間もの長期に渡って放置された事です。一時は取り壊しも検討されたそうですが、2000年になって都生活文化局から民間貸出(10年間無償)の方針が示され、レストラン経営者がボランティアの手などを借りて修復・復元工事をし、2002年6月からレストラン「小笠原伯爵邸」として復活しました。また、小笠原家子孫が宗家を勤める日本古来の礼儀作法の流派である 小笠原流礼法 の教場にもなっています。
 オープンから3年ほど経った2005年当時でもなかなか予約が取れなかったレストランに友人達と行く機会に恵まれました。お食事が美味しく感じる事の第一条件は、自分で料理したものでない事である私にはグルメ評論は出来ないのですが、美味しかった!事は確かです。薄味で上品かつ絶対に自宅では不可能な程多種類の手の込んだお料理の数々が料理がほんの一口ずつセンス良く盛りつけられていて感激!でも一つは一口ずつでも次から次へと運ばれて来るのでトータルすればかなりの量、最後まで頂くのが大変でした。主婦にとっては清水の舞台から飛び降りるような勇気がいるお値段でしたが、リッチな気分と共にコストパフォーマンスは最高だと思いました。
 お食事の後、館内を案内していただきました。


 喫煙室(上段右)
 この館の一番の見どころである庭に円く張り出したイスラム風喫煙室です。この部屋の濃密華麗な装飾 漆喰彫刻に彩色を施した壁面や大理石の柱や床 は、往時のままの美しさを誇っているそうです。
 
 
装飾タイル(下段左)
 喫煙室の屋根はスパニッシュ瓦、外壁は掻き落し仕上げの上に小森忍による生命の賛歌をモチーフにしたタイルで装飾されています。が、このれは復元されたもので、大きなお屋敷だからこその華やかさが印象的です。

 
お庭
 写真の上方に写っているのは、結婚式を挙げる為に設けられている施設だそうです。アラビアンナイト と言う言葉が頭を過ぎりますが、如何でしょうか?この館を貸切で結婚式を挙げるのは本当に素敵で贅沢な気分でしょうね!
 
 屋上庭園
 スペインの空の色を連想させる青いスパニッシュ瓦が少しご覧頂けるかと思います。また、背の高い枇杷の木にたわわに実がつていました。素朴な味がしそうな気がします。
 
 お庭に装飾品として設置されていたオーブンや水道の栓がとてもユニークで可愛くて、気に入りました。鶏のオーブンは”コケコッコー”と鳴いて焼き上がりを知らせるのでしょうか?
 1000坪の敷地に300坪の洋館が建っています。庶民の感覚で言えばなんて広い!と思うのですが、元は大名の下屋敷だった所、いつから敷地の切り売りが始まったのかは知りませんが、庭先には都営住宅などが建ち並び、決して周囲の環境や景色が良いとは褒められない状態です。都営地下鉄大江戸線の若松河田駅河田口を出ると、目に入るのは交番とそのお隣の都の施設の案内板。その脇を通ってすぐ裏にお玄関があります。左の写真の上の方に移っているのは隣のビルの外壁で、スペインの街並み(?)の絵が描かれているシートで被われていました。食堂の目の前にありますので、そのままではお料理の味も…と言ったところなのでしょう。
 放置されている間にステンドグラスも盗まれたりした様で、兎に角勿体無い!建物にとって可哀想な事が平気で行われていたのだと、ため息が漏れました。
 それでも見落として来たところも多いので、もう1度館内を見学したいのですが、お食事をまた…はとても!とても!叶いそうもない、でもいつかまたきっと!と夢見ています。


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